就中わけても)” の例文
就中わけてももろいのは銀杏いてふで、こずゑには最早もう一葉ひとはの黄もとゞめない。丁度其霜葉しもばの舞ひ落ちる光景ありさまを眺め乍ら、廊下の古壁に倚凭よりかゝつて立つて居るのは、お志保であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
就中わけても、銀之助はく笑つて、其高い声が台所迄も響くので、奥様は若い人達の話を聞かずに居られなかつた。しまひにはお志保までも来て、奥様の傍に倚添よりそひ乍ら聞いた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
御親類の御女中方は、いずれも質素じみな御方ばかりですから、就中わけても奥様御一人が目立ちました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの釣と昼寝と酒より外には働く気のない老朽な父親、泣く喧嘩けんくわする多くの子供、就中わけても継母——まあ、あの家へ帰つて行つたとしたところで、果してこれから将来さき奈何どうなるだらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
就中わけても、まだ小娘のように思われていた人達が遽かに姉さんらしく成って来たには驚かされる。そういう人達の中には大伝馬町おおてんまちょうの大勝の娘、それから竈河岸へっついがし樽屋たるやの娘なぞを数えることが出来る。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
全く御召物は奥様の御身の内と言ってもよいのですから。私も御側へ寄添いまして見せて頂きました。どれを拝見しても目うつりのする衣類ものばかり。就中わけても、私の気に入りましたのは長襦袢です。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
就中わけても、まだ小娘のように思われていた人達が遽かに姉さんらしく成って来たには驚かされる。そういう人達の中には、大伝馬町おおてんまちょう大勝だいかつの娘、それからへ竃河岸へっついがし樽屋たるやの娘なぞを数えることが出来る。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)