小野小町おののこまち)” の例文
ここは小野小町おののこまちの旧蹟だと伝えられて、小町の水という清水が湧いていた。二人はその冷たい清水をすくって、息もつかずに続けて飲んだ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小野小町おののこまちという美女は、情知らずか、いい寄った、あまたの公家衆くげしゅのその中に、分けて思いも深草ふかくさの少将。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
……在原業平ありわらのなりひら僧正遍昭そうじょうへんじょう喜撰法師きせんほうし文屋康秀ふんやのやすひで大友黒主おおとものくろぬし小野小町おののこまち……六人の姿が描かれてある。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女の相貌そうぼうは、この一ヶ月の間に、森華明もりかめいえがいた小野小町おののこまち美人九相の図を大急ぎで移って行ったように変りはてていた。ひたいは高く、眼窩めくぼは大きく、眼にはもう光がなかった。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小野小町おののこまち清少納言せいしょうなごん和泉式部いずみしきぶなどの歌った物を見ますと、女が主観の激しい細かな詠歎を残しておりますが、この方には割合に矯飾が行われずに真率に女性の感情が出ております。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「さようで、もっと古歌こかでありますそうで、小野小町おののこまちの、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玉藻ほどの才と美とをそなえていれば、采女の御奉公を望むも無理はない。その昔の小野小町おののこまちとてもおそらく彼女には及ぶまい。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)