小賢こざ)” の例文
いつガンベに小賢こざかしいという感じを与えて、油をしぼられないとも限らない不安がつきまとって離れなかったから。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
握る名と奪えるほまれとは、小賢こざかしきはちが甘くかもすと見せて、針をて去る蜜のごときものであろう。いわゆるたのしみは物にちゃくするより起るがゆえに、あらゆる苦しみを含む。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ワルトンは、栗色の髪を油でこてこてにした頭を、女の顔にぶっつかる程突き出して、褐色の瞳を小賢こざかしく、女の瞳に向き合せながら、幾分細長い顔にちょいちょい小皺を寄せる。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あられ……北国に住み慣れた人は誰でも、この小賢こざかしい冬の先駆のひずめの音の淋しさを知っていよう。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)