小千谷おぢや)” の例文
江戸の木綿問屋の手代で、名は健次、としは二十四。小千谷おぢやへ買いつけにゆくときと帰りと、米屋へ四たび泊っておすげと知りあった。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
奥州から越後の新発田しばた、村松、長岡ながおか小千谷おぢやを経、さらに飯山いいやま、善光寺、松本を経て、五か月近い従軍からそこへ帰って来た人がある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
十時十八分に小千谷おぢや駅に達する、そこから人力車または馬車で約五里を行くと小出こいで町である、小出から爪先上りとなって約三里を行くと
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
さらに信濃川流域の小千谷おぢや、十日町の地方まで、魚沼郡の三郡ほとんどは、新田の党が、古くから耕してきた土だった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくら八丈島の黄八丈きはちじょうは美しく、小千谷おぢやちぢみは美しいといっても、沖縄ほど多様な多彩な趣きは示しません。誠に圧倒的な仕事であると申さねばなりません。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「はい、そのことでございますか、実は故郷くにの名産の甲斐絹かいきを持って諸方を廻わり、付近ちかく小千谷おぢやまで参りましたついで、温泉いでゆがあると聞きまして、やって参ったのでございますよ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし上布としては、小千谷おぢやのものに席を譲らねばなりますまい。能美のみ白峯しらみねの「白山紬はくさんつむぎ」の名も言い添えねばならないでしょう。紬の仕事にはそう間違いがありません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)