家流いえりゅう)” の例文
それも謙遜だろうが、お松の字はお家流いえりゅうから世尊寺様せそんじようを本式に稽古しているのですから、どこへ出しても笑われるような字ではありません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この書体の淵源が「お家流いえりゅう」にあったという考えは極めて自然である。だが浄瑠璃本の字体としてついに独自の進展を遂げた。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
低い家柄に生まれた江戸の侍としては、林之助はちっとも木綿摺もめんずれのしないおとなしやかな男であった。相当に読み書きもできた。殊にお家流いえりゅうを達者に書いた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この女の家の門口にかっている「おん仕立物」とお家流いえりゅうで書いた看板の下をくぐって、若い小学教員が一人度々出入をしていたということが、のちになって評判せられた。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
美しいお家流いえりゅう筆蹟ひっせきであった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)