家士かし)” の例文
まだ早いのであろう、裏庭にある家士かし長屋も雨戸が閉っているし、いつもすぐとび出して来る飼犬の『もじゃ』も姿を見せない。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
阿波二十五万石の蜂須賀重喜しげよし、まだ若くはあるが英邁えいまいな気質、うちに勤王の思想を包み、家士かし研学隆武けんがくりゅうぶにもおこたりがない、——さきには式部を密かに招いて説を聞き
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高七万石ほどの諸侯なるが、公辺は養子と称し、壮年にて隠居し家督を伝え、家財、封禄、家士かしに至るまで三千金にかえて、おのれは外邸にひそみ居るあり。父子の礼もなかるべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
女客は別の座敷で、これは三女のしずが相手をし、こちらのほうは叔母のせきと、若い二人の家士かしとでとりもちをした。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
半三郎は出仕もせず、酒を飲んだり遊び歩いたりするばかりで、家計は窮迫し、家扶かふ家士かしも、下男小者も出ていってしまった。借財はかさむだけ嵩み、いまでは友人たちもさじを投げてしまった。
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)