“害(や)” の例文
「でもね、親分。——犬が女を殺した事だけは本当ですぜ。上根岸の寮で、元吉原(なか)で鳴らした、薄雲花魁(おいらん)が害(や)られたんで」
ところがね、ちょうどその晩兼六園の席貸しな、六勝亭、あれの主翁(あるじ)は桐田(きりた)という金満家の隠居だ。この夫婦とも、何者の仕業(しわざ)だか、いや、それは、実に残酷に害(や)られたというね。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
邸境(やしきざかひ)になつてゐる杉林に沿つたところを犂返へしてゐる一人の中年の男が、それに答へるやうに、何かで酷(ひど)く咽喉(のど)を害(や)られてゐる皺嗄声(しわがれごゑ)で、「何だつてまだ耕作(しごと)には時節が早過ぎるわ。」と嘯(うそぶ)いた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)