委嘱いしょく)” の例文
旧字:委囑
後に思いあわせれば、あとは——といったこの短いことばの中に、彼の万感と、死後の委嘱いしょくは、すべてこめられていたのであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余はこの日かく改まった委嘱いしょくを受けようとは予期しなかったので、少し面食めんくらいながらも、謹んでその話を聴いていた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
正直ヲ云ウト、僕ハコノ現像ヲ木村ニ委嘱いしょくスベキデアルカ否カニツイテ、ソノ時マデナオ決シカネルトコロガアッタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いくら女でも、剣家の娘だから、常住、雄渾豪快な気を養わねばならぬといって、亡き父十方斎が、当時名ある画家に委嘱いしょくして、この会心の筆をふるってもらったもの。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ロシア政府からの委嘱いしょくもあったでしょう、まずこういうふうに成功したということを、いろいろの証拠物件によって証明したものとみえ、ロシア政府はそれに対して沢山な機密費を与え
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
……ただ貴公に委嘱いしょくしておきたいことは、播磨はりまの御陣にある秀吉様のそばにあって、この上とも、良い輔佐ほさとなっていただきたいことしかない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一旦夫人の委嘱いしょくを成就した彼に取っては、すみやかに奥御殿の警備が解かれ、たやすく夫人に接近し得る機会の来ることが望ましいので、こうして城中の不安を除こうと謀ったのであった。
友松は中国の梁楷りょうかいの画風をならって、狩野、土佐ともべつに、近頃、独自な一家の画境を開拓し、ようやく世人に認められて来ていたが、なぜか安土の襖絵ふすまえを信長から委嘱いしょくされたときには
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
M家の祖保科正之ほしなまさゆきが、武蔵の人となりに敬愛して、肥後の細川家へ委嘱いしょくし、幾幅いくふくかの画を乞いうけたものを屏風にしたものだと伝えられているのみか、維新の際、若松城が兵火につつまれた際
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)