妲妃だっき)” の例文
当時洛邑の遊び女には妲妃だっき褒姒ほうじ、西王母、というようなむかし有名な嬌婦や伝説中の仙女の名前を名乗っている評判のものもあった。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
てめえこそ妲妃だっきのお百だあ。出て行きやがれ! てめえなんざ不潔極まる肉魂だぞ。悪徳と性慾の掃溜みたいな奴だ。醜悪でえ!
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
則天武后だの呂后ろごうだの、褒似ほうじだの妲妃だっきだのというような、女傑や妖姫ようきの歴史を見れば、すぐ頷かれることだからね。
鴉片を喫む美少年 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この時、源之助は一番目に妲妃だっきのお百という大役をしている。この芝居の殺し場は、女一人で男を殺すなど、役にも変化があり、最後まで悪人のはびこる芝居である。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「ほん当にそうじゃなもし。鬼神きじんのおまつじゃの、妲妃だっきのお百じゃのててこわい女がりましたなもし」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの紂王ちゅうおうにすすめて、百姓ひゃくしょうからおもいみつぎものをてさせ、非道ひどうおごりにふけったり、つみもないたみをつかまえて、むごたらしいしおきをおこなったりした妲妃だっきというのは、わたしのことでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
知っているのは、高橋おでんや、村井長庵や、妲妃だっきのお百なぞの事情と行為とであり、それが彼らを内部や外部から実際に推し動かす動力であった。
都会の中の孤島 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)