妖精ばけもの)” の例文
兵法ひょうほうに曰く柔よく剛を制すと、深川夫人が物馴ものなれたるあつかいに、妖艶ようえんなる妖精ばけもの火焔かえんを収め、静々と導かれて、階下したなる談話室兼事務所にけり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今では福太郎から天にも地にも懸け換えのないタッタ一人の女神様のように思われている女であった……だからその母親か姉さんのようになつかしい……又はスバラシイ妖精ばけものではないかと思われるくらい婀娜あだっぽいお作の白々と襟化粧えりげしょう
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その向うに、こんな夜更よふけには、水の妖精ばけものが、かおを出して、人間界をのぞ水目金みずめがねのような、薄黄色な灯が、ぼうとして、(蕎麦そばアウウ……)——と呼ぶんです。
時々、あの辺で今まで見た事の無い婆様ばあさんに逢うものがございますが、何でも安達あだちが原の一ツ婆々ばばという、それはそれは凄い人体にんていだそうで、これは多分山猫の妖精ばけものだろうという風説うわさでな。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)