大門口おおもんぐち)” の例文
私は、吉原の孔雀長屋くじゃくながやにいる者ですが、お綱さんの親父さんが大門口おおもんぐちで喧嘩をして対手あいての侍に斬られました。え、昨日の朝の出来事なんで……。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大門口おおもんぐち播磨屋はりまやで、二合の酒にあぶたまで飯を食って、勘定が百五十文、そいつがまた俺には忘れられねえ味合だ
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その次の夜には三回目なじみを付けた。三回目の朝には八橋が大門口おおもんぐちまで送って来た。三月ももう末で、仲の町の散る花は女の駒下駄の下に雪を敷いていた。次郎左衛門もその雪を踏んで、一緒に歩いた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大方はそれが、張出し幕の縫目を漏れてぼうと座敷へ映るのであろう……と思う。欄干下らんかんしたひさしと擦れ擦れな戸外おもてに、蒼白い瓦斯がす一基ひともと大門口おおもんぐちから仲の町にずらりと並んだ中の、一番末の街燈がある。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五十けんの両側に、暖簾のれんをならべている飲食店の内から、客や女が、いっせいに外へ飛びだしてみると、くるわ大門口おおもんぐちから衣紋坂えもんざかの方へ、一人の侍が、血刀を持ったまま、ぬすのように逃げて行った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)