大洪水おおみず)” の例文
地震と、大洪水おおみずと、火とが、一緒に来たように市中は昏迷こんめいしている。大坂城はどっしりと宵の空に構えてはいるけれど誰も頼みには思わなかった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのあくる年の夏、橘之助は京都の大洪水おおみずで、夫の圓と死んでしまった。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
先刻さっきの今が、まるで五十年昔あった、火事か大洪水おおみず、それとも乱国、戦国時分かと思われますような、いやな、変な、すごいような、そうかと申すと、おかしいような、不思議なような、さればといって
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、この子は、大洪水おおみずの時のことまで考えているのかえ。子供みたいじゃないね」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高廉こうれんの妖法は、ただ宇宙の天色や気象に異変を呼び起すだけでなく、こつとして、炎を大地に生ぜしめ、また大洪水おおみずを捲きおこし、そうかと思うと、豺狼さいろう豼貅ひきゅう虎豹こひょうなどの猛獣群を
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)