大業物おおわざもの)” の例文
御所へ水を入れるところのせきの蔭から、物をも言わずおどり出でた三人の男がある。大業物おおわざものを手にして、かお身体からだも真黒で包んでいた。
しきりにすいすいと大業物おおわざものへ油を引いていたのも、世は腹の立つ程泰平と言いながら、さすが直参お旗本のよき手嗜てだしなみです。
としかつめらしく、軽く頭を下げると同時に、スラリ鞘走さやばしらせた一刀は、釣瓶落つるべおとしの名ある二尺八寸、備前長船おさふね大業物おおわざもの
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やんわりと握った太刀の柄、居付かぬように動かせば、大倶利伽羅広光鍛おおくりからひろみつきたえ、乱れまじりの大業物おおわざもの鉾子先ぼうしさきから鍔際まで、傾むく夕陽に照り返り、ブ——ッと虹を吹きそうだ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と大喝一声、玄蕃の腰から銀の飛龍とひらめき飛んだ三尺一寸の大業物おおわざもの
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何ぶんにも大業物おおわざものですからな。」
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
左手に大業物おおわざもの蝋色ろういろさやを、ひきめ下げ緒といっしょにむんずとつかんで、おどろいたことには、もうその、小蛇のかま首のようなおや指が、今にも鯉口こいぐちを切ろうとしているのだ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「刀が非常な大業物おおわざものであるか、さもなければ、人が非常な斬り手である」
かれのつところの刀は、にえ至って細く、三杉の小亀文みだれが多くまたすずやきもあり、ことにその二代兼元なる関の孫六となると、新刀最上々の大業物おおわざものとして世にきこえているが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その、天下に冠たる左手に握られた、大業物おおわざもの、濡れつばめです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)