大旦那おおだんな)” の例文
大旦那おおだんな、どちらへ、半蔵さまも御一緒かなし。お前さまがこんなに村を出歩かせるのも、御病気になってから初めてだらずに。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大旦那おおだんなは咋夕からおふせりで、それからお嬢さんもご病気で」と挨拶あいさつした。私は、「おや」と思いながら、さっさと自分の河沿いの室へ入った。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「お前さん、しばらく見えなかっただね、一昨年おととしの正月も昨年の正月もなくなられた大旦那おおだんなが、あれが来ないがどうしたろうと言っておらしたに」
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
どうもわしも、めっきり弱くなったよ。くなった大旦那おおだんなさまは、みんなの病気を、いつも封蝋ふうろうで療治なすったものだ。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それからその家の主人の、「きんやさん」といつも私の父母が親しそうにしていた大旦那おおだんなのことも、それから私達の世話をよくしてくれたそのお内儀かみさんのことも、殆ど私の記憶から失われている。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
家を出ると、急にむずかしき顔して衣紋えもんをつくろい、そり身になってそろりそろりと歩いて、物持の大旦那おおだんながしもじもの景気、世のうつりかわりなど見てまわっているみたいな余裕ありげな様子である。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
大旦那おおだんなのお部屋です。確かに」
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大旦那おおだんな——こないだの上納金のお話よなし。ほかの事とも違いますから、一同申し合わせをして、お受けをすることにしましたわい。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「まことに済みませんが、店の者みんな出払ちゃいましたし大旦那おおだんなにもお嬢さんにも寝込まれちゃいましたので……」
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大旦那おおだんな、店座敷(ここは宿役人の詰め所をさす)の方でお茶を一つお上がり。まだ役人衆はどなたも見えていませんから。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「このお部屋、大旦那おおだんなが母屋へお越しになってから、しばらく木ノさんがいらしったんでしょう……」と云った。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大旦那おおだんな、ちょっくら物を伺いますが、正月を二度すると言えば、年を二つ取ることだずら。村の衆の中にはそんなことを言って、たまげてるものもあるわなし。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
用意した場所の深さは何尺、横幅何尺、それだけの深さと横幅とがあれば大旦那おおだんなの寝棺を納めるに充分であろうなぞと佐吉は語る。やがて生々なまなましい土のにおいが半蔵らの鼻をついた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そうです、わたしも大旦那おおだんなに賛成です。」と清助も言葉を添える。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お師匠さまや先の大旦那おおだんなには、格別ひいきにしていただいたで。」
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大旦那おおだんな、お早いなし。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)