大慌おおあわ)” の例文
それが白雲の帰ったのに気がつくと、大慌おおあわてに慌てて、鈴を火鉢の隅に置くやら、御幣を神棚へ載せようとするやら、ようやく般若の面を取って
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兄は会社関係から、日本毛織の販売所に、親しいひとがいて、特に、二日で間に合うように頼んでやる、というので、ぼくは大慌おおあわてに、支度したくを始めました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
と思って一瞬、色蒼いろあおざめたが、九叔が悶掻もがきながらも「早く、かごでも戸板でも呼んでくれ。家へ帰って養生したい」と叫ぶので大慌おおあわてに人を頼んで、九叔を家へ送らせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大慌おおあわてで団子と茶代を置いて、道庵が外へ飛び出したものですから、皆々ホッとしました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
智深はむっくり起きに、蔵堂ぞうどう裏の竹林へ出て、こころよげに放尿していた。そこへ上人のお召しときたので、彼は大慌おおあわてに後へついていき、おそる畏るその座下にうずくまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝の勤行ごんぎょうにおくれては露顕ものだと、大慌おおあわてに飛び出して、今いった赤山明神の近くまで来ると、どうだおい、美しい女が、範宴の袖にすがって泣いているのだ、範宴の当惑そうな顔ったらなかった
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)