夜深よふ)” の例文
平民週報社の楼上を夜深よふけて洩るゝ燈火ともしびは取り急ぐ編輯へんしふの為めなるにや、否、燈火の見ゆるは編輯室にはあらで、編輯室に隣れる社会主義倶楽部の談話室なり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
じかに根岸庵をおとないて華厳の滝壺にて採りたる葉広草、戦塲が原の菖蒲の花など贈る。夜深よふけて家に帰る。
滝見の旅 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一個ひとり幼児おさなごを抱きたるが、夜深よふけの人目なきに心を許しけん、帯を解きてその幼児を膚に引きめ、着たる襤褸らんるの綿入れをふすまとなして、少しにても多量の暖を与えんとせる、母の心はいかなるべき。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)