墨蹟ぼくせき)” の例文
他の国の宮廷にもないと思われる華奢かしゃを尽くした姫君の他の調度品よりも、この墨蹟ぼくせきの箱を若い人たちはうかがいたく思った。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
彼の遺作として、今日、伝えられている物には、何といっても、二天印の水墨画がその大部分をなしているが、ほかにも幾点かの墨蹟ぼくせき。また彫刻。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空海くうかい道風どうふう佐理さり行成こうぜい——私は彼等のいる所に、いつも人知れず行っていました。彼等が手本にしていたのは、皆支那人の墨蹟ぼくせきです。しかし彼等の筆先ふでさきからは、次第に新しい美が生れました。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは見る人の感動した涙も添って流れる気のする墨蹟ぼくせきで、いつまでも目をお放しになることができないのであったが、また日本製の紙屋紙かんやがみの色紙の
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
粗朴そぼくな壁に、禅家の墨蹟ぼくせきが懸っているほか、何もないとこをうしろに、秀吉は、至極気楽にあぐらを組んだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)