坪庭つぼにわ)” の例文
その児がよくく児でアダコ(子守)が幾らだましてもき止まぬが、不思議に坪庭つぼにわの松の木の下へ来るとぴたりと啼かなくなる。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
半蔵が挨拶あいさつに行って見たころは、駿河するがは上段の間から薄縁うすべりの敷いてある廊下に出て、部屋へやの柱にりかかりながら坪庭つぼにわへ来る雨を見ていた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
窓の外は狭い坪庭つぼにわであって、石灯籠や八手やつでなどがあった。その庭を囲んでいるものは、この種の妾宅にはつき物にしている船板の小高い塀であった。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仕切りべいをまわした坪庭つぼにわには、高さ一丈ばかりのまきの木が五本あって、庭の白く乾いたぎらぎらする裸の土の上へ、染めたように黒く影をおとしていた。
よく晴れた今日は九月××日で、坪庭つぼにわでは萩と木犀と菊と、うめもどきと葉鶏頭と山茶花さざんかとが、秋のお祭りを行ってい、空ではかりが渡来したばかりの、元気のよい声でうたっていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)