地辷じすべ)” の例文
ところが、その後明暦三年になると、この地峡に地辷じすべりが起って、とうにそのときは土化してしまっている屍の層がき出しにされた。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
恐ろしい地辷じすべりあり、恐ろしい地震があり、深い心の底には燃ゆる火もあり、く水もあり、すずしい命の水もあり、せば力の黒金剛石の石炭もあり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
具体的に云えば地辷じすべり等がある限界内に止まれば、それだけにて止むも、少しにてもこれを超ゆれば他の弱点の破壊を誘起して更に大なる変動を起す事もあるべく
自然現象の予報 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この山そばだとて無論地辷じすべりで埋つて了つてゐたのを、やつとどうにか道をあけたのだ。仰ぐとまゆみには実が青くついてゐる。臭木の実の紅と黒とはもはや何の潤ひもなく萎へて了つた。
蜜柑山散策 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あしは痛いが勉強して上る。初め三角形に白かった山は、肌が見えて来る。赭色をした地辷じすべりも露われてくる。もう少しもう少しと上るうちに、南の方にもまた一つ白い峰が顔を出す。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
むかしは樹がしげった渓谷だったでしょうが、地辷じすべりもあってすっかりうもれた。そこへ、ピルコマヨが流路を求めてきた。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)