在所ありどころ)” の例文
やがて遠い廊下をぱたぱたけて来る足音がこえた。彼はその足音のぬしを途中で喰いとめて、清子の用を聴きに行く下女から自分のへや在所ありどころを教えてもらった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここで、枕の位置がまると、寝台ねだいむきも、工合ぐあいも、方角も定まったので、どの道暗がりの中を、盲目覗めくらのぞきではあるが、ひらき、窓、卓子テエブル、戸棚の在所ありどころなどがしっかり知れる。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
氷室ひむろ朔日ついたちと云って、わかい娘が娘同士、自分で小鍋立こなべだてのままごとをして、客にも呼ばれ、呼びもしたものだに、あのギラギラした小刀ナイフが、縁の下か、天井か、承塵なげしの途中か、在所ありどころが知れぬ
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)