国造くにのみやつこ)” の例文
旧字:國造
……さうして出雲のおみ天穂日命の後裔が初めて武蔵の国造くにのみやつこに任ぜられ当社に奉仕してから代々の国造が祭を掌ることになつた、といふ。
府中のけやき (新字旧仮名) / 中勘助(著)
村の君主は国造くにのみやつこと称せられた。後になるほど、政権の含蓄がこのことばに乏しくなって、教権の存在を感じるようになっていったようである。
最古日本の女性生活の根柢 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
その一族が、すなわち物部もののべ族であって、「国造くにのみやつこ」として、大きな領土をもっていた。国造とは、地方にいた領主のことであった。
大化以前には国造くにのみやつこ県主あがたぬし等の所領の外に、天皇直轄御領の公田すなわち大御田があって、その農民すなわち公民を大御田族おおみたからと呼んだものであったであろう。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
命はそれをまにお受けになって、その野原の中へはいっておいでになりますと、国造くにのみやつこは、ふいにその野へ火をつけて、どんどん四方から焼きたてました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
おみむらじ国造くにのみやつこ県主あがたぬしなど、勢力のある氏のをさが、土地人民を私有してゐたので、天皇は、氏の長を率ゐて居られるだけで、直接の御領地以外は、人民全体から、税なども
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
さて、ここに問題なのは、ヒダには国造くにのみやつこ、つまり朝廷の任命したヒダ長官のすむ都が今の高山市内の七日町というのに当っていて、ここにはこれを無言で証明する如くに国分寺趾や惣社がある。
しかも各地に国造くにのみやつこがいたのである。それは、それぞれ独立した地方権力者と解するのが、至当であろう。「みやつこ」とは「奴隷」のこととは、解しえない。
その後まもなく、その播磨はりまの国へ、山部連小楯やまべのむらじおだてという人が国造くにのみやつこになって行きました。するとその地方の志自牟しじむという者が新築しんちくしたおうちでお酒盛さかもりをしました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
一方に我が大和朝廷の御稜威みいづは、次第にこれら倭人の諸国に及び、その帰順したものは我が帝国に併合して、その国王は所謂国造くにのみやつこ県主あがたぬしなどに任ぜられ、祖先以来の本領の安堵を得たのであったが
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
命はそれから尾張おわりへおはいりになって、そこの国造くにのみやつこむすめ美夜受媛みやずひめのおうちにおとまりになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)