固肥かたぶと)” の例文
又八またはちは、その「豊年童子」にかぞえられる組だった。だが又八のほうは、彼よりいくらか低くて固肥かたぶとりに出来ていた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呼びかけた侍は三十歳ばかりで、固肥かたぶとりの小柄な男だった。声は低く、穏やかであった。
しかし、真面目まじめで、無口で、からだは図ぬけて大きく、固肥かたぶとりという方で、団栗どんぐりのような眼をもっている。一見豪傑らしいが、その丸っこい眼が、にやっと笑うと、まるで、子どもだ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城外のからにあたる黒沢の裏谷に、黒沢衆とも青鷺衆ともよばれている外者そともの(藩外の雇傭人こようにん)の小屋だまりがある。近侍は、そこのたむろから二十五、六歳の小がらで固肥かたぶとりな男を呼び出した。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)