四足しそく)” の例文
「このこつだ。それ。」と懸声して、やっと一番活を入るれば、不思議や四足しそくをびりびりびり。一同これはと驚く処に
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
了解さとりの悪い人だ——それ、調里のことを四足しそくと言ふぢやないか。はゝゝゝゝ。しかし是は秘密だ。誰にも君、斯様なことは話さずに置いて呉れ給へ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一頭の大きい白猿が四足しそくゆかにくくられていて、一行を見るや慌て騒いで、しきりに身をもがいても動くことが出来ず、いたずらに電光のような眼を輝かすばかりであった。
先ず着物の定役ていえきしるさんに赤き筒袖の着物は単衣ひとえものならば三枚、あわせならば二枚、綿入れならば一枚半、また股引ももひき四足しそく縫い上ぐるを定めとし、古き直し物も修繕の大小によりてあらかじめ定数あり
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
父は三山さんざん蔵王山ざわうさんあたりを信心して一生四足しそくを食はずにしまつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
つい眼の前には板戸のごとき大肉俎おおまないたすえられしに、こうし大の犬の死体四足しそくを縮めてよこたわれるを、いまだ全く裂尽さけつくさで、切開きたる脇腹より五臓六腑溢出あふれいで、血は一面に四辺あたりを染めたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
可憐あわれむべしお手飼の狆は、一棒をくらってころりと往生し、四足しそくを縮めて横たわりぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)