はしや)” の例文
陰気な、不潔な、土埃の臭ひと黴の臭ひの充満みちみちたる家であつた。笑声とはしやいだ声の絶えて聞こえぬ、湿つた、唖の様な家であつた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
吉につれられた十七人の子供たちは、みんなはしやぎ切つて騒ぎながら線路堤を杉林の方へ進んで行きました。
文化村を襲つた子ども (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
信吾の不意につて以來、富江は長い手紙を三四度東京に送つた。が、葉書一本の返事すらない。そして富江は不相變あひかはらず何時でもはしやいでゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
信吾の不意につて以来、富江は長い手紙を三四度東京に送つた。が、葉書一本の返事すらない。そして富江は相不変あひかはらず何時でもはしやいでゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
暑い/\八月も中旬なかばになつた。螢の季節ときも過ぎた。明日あすは陰暦の盂蘭盆うらぼんといふ日、夕方近くなつて、門口からはしやいだ声を立てながら神山富江が訪ねて来た。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
智惠子は、信吾が歸つてからの靜子の、常になく生々とはしやいでゐることを感じた。そして、それが何かしら物足らぬ樣な情緒を起させた。自分にも兄がある。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
智恵子は、信吾が帰つてからの静子の、常になく生々いきいきはしやいでゐることを感じた。そして、それが何かしら物足らぬ様な情緒こころもちを起させた。自分にも兄がある。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
明日は陰暦の盂蘭盆といふ日、夕方近くなつて、門口からはしやいだ聲を立てながら神山富江が訪ねて來た。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
酒となると談話が急にはしやぐ。其處にも此處にも笑聲が起つた。五人の藝妓の十の袂が、銚子と共に忙がしく動いて、なまめいた白粉の香が、四角に立てた膝をくづさせる。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)