嘱望しょくぼう)” の例文
近頃大いに現れた若い捕物作家達に、この形式の小説を「高い芸術」にまで引上げることを嘱望しょくぼうして引込みたいと思っている。
捕物小説のむずかしさ (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
酒もたしなまず、温和で頭のよい将来を嘱望しょくぼうされている人物だったから、父も兄ものりきで縁組をしたのであった。
日本婦道記:不断草 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今から五年ばかり前までは女流ピアニストとして楽壇若手では最も未来を嘱望しょくぼうされていた一人であった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ところがかつて基督教に興味を持ってバイブルを読んでいましたから、外人の牧師とも話が合って、嘱望しょくぼうされてそれらの外人牧師と一緒に廃娼はいしょう問題を説いた事もありました。
我が宗教観 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
あとから追付かむとする評論家の息をはずませてやり給へと遥かに嘱望しょくぼう仕候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
舞台にいた頃、将来が大いに期待されると、その方面の人々に嘱望しょくぼうされ、新聞の劇評にもそう幾度か書かれ、やめる前にもそうした賞讃的記事が書かれたところだったのに、どうしてやめたのか。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
翁の晩年の弟子の中で最も嘱望しょくぼうされていたのは斎田惟成氏であった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
この青年社員は頭も風采ふうさいもよく、実直で、前途を嘱望しょくぼうされている。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
快川の嘱望しょくぼうはまったくなくなったといっていい。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気のめぐりのひろい、しかもひとつ事をこつこつと丹念にやるという気性で、家中の嘱望しょくぼうを集めていたから、この高松移居にはかなりはげしい反対運動がおこった。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)