嗷訴ごうそ)” の例文
と、大岳たいがくの鐘を鳴らして、嗷訴ごうその気勢をあげるやら、造営奉行の高ノ師直の屋敷へ押しかけて、石を投じたり、落書するなど、物情騒然のうちに年も暮れた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ともかくも現場へお越しくだされ、百姓どもの憐れの様子、一揆嗷訴ごうそをいたさいでは、とうていいられぬ窮境を、実地にご覧くださりませ、郡兵衛お願いいたしまする」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
処罰は叡山と幕府のあいだで長い紛糾ふんきゅうを見、尊氏としては、道誉をかばい抜いたのだが、山門大衆の嗷訴ごうそに押されて、ついに流罪のほかなくなったものだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などと人心を暗きに落とし、課税の手段に至っては、いわゆる微に入り細に入り、特に農民方面へは、苛斂誅求かれんちゅうきゅうをこれ事とし、ために農民負担に堪えかね、一揆を起こし嗷訴ごうそをし
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「しからずんば、嗷訴ごうそ(大衆の示威運動)あるのみだ。日吉ひえ山王の神輿みこしげて、朝廷へ迫ろう。奈良の興福寺大衆も、春日神木かすがしんぼくをかついで、われらと同時に、洛内へくり出せ」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これまでいっても解らぬかな……今の話の白縮緬組、南都の悪僧が嗷訴ごうそする時春日かすがの神木をかつぎ出すように、お伝の方の飼い犬を担ぎ出して来ると云うではないか。だから迂濶には手が出せぬ。
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、五台四めいの峰にのりをともしたのは、神輿みこしをかついで朝廷へ嗷訴ごうそするためだったか。政治に容喙ようかいして特権をたくましゅうするためだったか。武力とむすび権門を使嗾しそうし、世をみだすためだったか。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)