商量しょうりょう)” の例文
余は白い寝床ベッドの上に寝ては、自分と病院ときたるべき春とをかくのごとくいっしょに結びつける運命の酔興すいきょうさ加減をねんごろに商量しょうりょうした。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はむしろ冷やかに胸の天秤てんびんを働かし始めた。彼はお延に事情を打ち明ける苦痛と、お秀から補助を受ける不愉快とを商量しょうりょうした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
悩乱のうらんのうちにまだ一分いちぶん商量しょうりょうを余した利巧りこうな彼女は、夫のかけた鎌をはずさずに、すぐ向うへかけ返した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どっち本位ほんいで来たのか、それは彼の心がよく承知していた。けれども雨をしのいでここまで来た彼には、まだ商量しょうりょう隙間すきまがあった。躊躇ちゅうちょがあった。幾分の余裕が残っていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)