唐衣からごろも)” の例文
五つぎぬ上衣うわぎ青海波せいがいはに色鳥の美しい彩色つくりえを置いたのを着て、又その上には薄萌黄うすもえぎ地に濃緑こみどりの玉藻をぬい出した唐衣からごろもをかさねていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いい歌だね。それに似たようなのが内地にもあるよ……野辺にいでて、そぼちにけりな唐衣からごろも、きつつわけゆく、花の雫に。それはそうと、きょうはひどくご機嫌だね」
骨仏 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
血る潔く清き身に、唐衣からごろもを着け、袴を穿くと、しらしらと早やあさひの影が、霧を破って色を映す。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「聞いたような名だがどこが珍しい」——「〽泉嘉門の珍しさは、なんにたとえん唐衣からごろも、錦の心を持ちながらも、襤褸つづれに劣る身ぞと、人目に見ゆる情けなや、ころは神無月かんなづきの夜なりしが、酒を ...
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
唐衣からごろも君が心のつらければたもとはかくぞそぼちつつのみ
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そうして、ひとりのあでやかな上臈じょうろうの立ち姿がまぼろしのように浮き出て来た。柳の五つぎぬにくれないの袴をはいて、唐衣からごろもをかさねた彼女の姿は、見おぼえのある玉藻であった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)