唐蜀黍とうもろこし)” の例文
夜の灯に照らされた西瓜の色は、物の色の涼しげなる標本と云ってもよい。唐蜀黍とうもろこしの付け焼きも夏の夜店にふさわしいものである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
唐蜀黍とうもろこしの毛をすこし植えたように、鼻の下にうすひげが生えている、尺八を持っているから虚無僧と人も見ようが、うす汚い着物に、一腰ひとこしの太刀を帯び、乞食か侍か
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といって、けものの毛でもない。もちろん唐蜀黍とうもろこしでもないと云う。そこでわたくしは舶来の人形ではないかとふと考えたんです。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
うらの方は畑になって矢はり唐蜀黍とうもろこしなどが栽えてある。その畑のなかに白地の単衣をきた女が忍ぶように立っている。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
観音堂に参詣して、例の唐蜀黍とうもろこしや青ほおずきの中を通りぬけて、午飯ひるめしも食わずに急いで帰ると、善八が待っていた。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大久保百人町に仮住居かりずまいをしている当時、庭のあき地を利用して、唐蜀黍とうもろこしの畑を作り、へちまの棚を作った。
我家の園芸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大久保百人町に仮住居かりずまいをしている当時、庭のあき地を利用して、唐蜀黍とうもろこしの畑を作り、糸瓜の棚を作った。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三浦老人の旧宅にも唐蜀黍とうもろこしが栽えてあって、秋の初めにたずねてゆくと、老人はその出来のいゝのを幾分か御自慢の気味で、わたしを畑へ案内して見せたこともあった。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
庭の広いのと空地の多いのとを利用して、わたしも近所の人真似ひとまねに花壇や畑を作った。花壇には和洋の草花の種を滅茶苦茶にまいた。畑には唐蜀黍とうもろこしや夏大根の種をまき、茄子なすや瓜の苗を植えた。
そんな贅沢ぜいたくを云っているのは、駐屯無事の時で、ひとたび戦闘が開始すると、飯どころの騒ぎでなく、時には唐蜀黍とうもろこしを焼いて食ったり、時には生玉子二個で一日の命をつないだこともありました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは何かの缶詰が三つ四つと、大きい唐蜀黍とうもろこし五、六本であった。
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)