哀憐あはれみ)” の例文
丑松は仙太を背後うしろから抱〆だきしめて、誰が見ようと笑はうと其様そんなことに頓着なく、自然おのづ外部そとに表れる深い哀憐あはれみ情緒こゝろを寄せたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
是においてか彼、一の哀憐あはれみ大息といきの後、狂へる子を見る母のごとく、目をわが方にむけて 一〇〇—一〇二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
予も亦彼に對して一度も哀憐あはれみを乞ふが如き言葉を出したことがない。
郁雨に与ふ (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それを卯平うへいこゝろから哀憐あはれみじやうもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あゝ——お志保だ——お志保の嗚咽すゝりなきだ——斯う思ひ附くと同時に、言ふに言はれぬ恐怖おそれ哀憐あはれみとが身をおそふやうに感ぜられる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
斯うなると丑松の方ではかへつて気の毒になつて、病の為に先輩を恐れるといふ心は何処へか行つて了つた。話せば話すほど、哀憐あはれみ恐怖おそれに変つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)