哀哭あいこく)” の例文
己の憐れさをあわれむ語である。邦訳聖書において見るもその悲哀美に富める哀哭あいこく(Lamentation)たるを知り得るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
一笑という俳人の墓を弔った時の句で、我が哀哭あいこくの声は秋風の吹くが如く強く切なるものがある。そのために塚も動けよかし、というのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
言い終るとまもなく、彼は従容しょうようとして死に就いた。宋江も呉用も、哀哭あいこくしてとりすがったが、魂魄こんぱく、ついに還らなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光り物と烈しい響音(天床裏を石臼いしうすでも転げるような)と哀哭あいこく悲鳴とが建物ぜんたいを包む、それは正に「化物どもが獲物を迎えて大饗宴きょうえんをひらく」
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ドッチの肩を持ったろう? 多恨の詩人肌から亡朝の末路に薤露かいろの悲歌を手向たむけたろうが、ツァールの悲惨な運命を哀哭あいこくするには余りに深くロマーノフの罪悪史を知り過ぎていた。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼の苦言もただヨブより哀哭あいこくの反覆を引き出したのみに終った。神の言であるという聖書に、かく友に対する無情なる語あるをあやしむ人があるであろう。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「さすればこれは海のすなよりも重からん、かかればわが言躁妄みだりなりけれ」とあるは、苦悩大なるため前の哀哭あいこくも我れ知らず躁妄に陥ったのであるとの意である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)