“否（ノン）” の例文
否（ノン）ムッシュといつて、女は肘を張り、男は脚をひろげたりして、占有してる座席を讓るまいとする心事がはつきり讀み取れた。
大戦脱出記 (旧字旧仮名) ／ 野上豊一郎(著)
お前は路（みち）ばたの見知らぬ乞食に、ほんとかどうかわからないという口実の下（もと）に「否（ノン）」と言った。
ぶどう畑のぶどう作り (新字新仮名) ／ ジュール・ルナール(著)
愛したか？　否（ノン）。いやもっと正しくいえば、私は彼の私に対する愛を愛したのである。けれども私は愛において不実であることができないので、自分でも彼を愛してるように感じていた。
マリア・バシュキルツェフの日記 (新字新仮名) ／ 宮本百合子(著)
確然たる証拠によって明瞭に応（ウイ）とか否（ノン）とかいってもらいたいのである。
魔都 (新字新仮名) ／ 久生十蘭(著)
否（ノン）、ムッシュウ
豆腐買い (新字新仮名) ／ 岡本かの子(著)