吊下つりさ)” の例文
そのうちに彼女の身体を吊下つりさげている紐が切れ、下へ落ちてしまったのであろう。おそらくそれは広い海の中であったことと思われる。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これから後、この上に吊下つりさがつてゐる。もう見物人が居ないから、無限は劇場の戸を閉ぢて了ふ——然し冥想して夢むらく、甞つて「五角」であつた、これから「三角」にならう。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
織次は、飛脚に買去かいさられたと言う大勢の姉様あねさんが、ぶらぶらと甘干あまぼしの柿のように、樹の枝に吊下つりさげられて、げつろしつ、二股坂ふたまたざかさいなまれるのを、目のあたりに見るように思った。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高い天床から吊下つりさげられた電燈が灰の噴霧のゆれるたびにぼんやりと明暗をつくる——かがんだ背中だの振り上げた腕の筋肉の隆起がゆれかえる霧の中に見えたり隠れたりする、みんな黙っている
蛮人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
坑道を通って外へ鉱石をはこび出すためのケーブル吊下つりさげ式の運搬器うんぱんきも、その鉄塔も、爆風のため吹きとんでしまい、今は切れ切れになった鋼索こうさくが、赤い土のあいだから
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)