合憎あいにく)” の例文
「大変な木戸でしょうだって、あれで難癖を附ける積りが合憎あいにくと旦那がお取上に相成らんから可い気味だ。愚態ざまア見やアがれだ」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
合憎あいにくわれとは大分だいぶはなれて居たのでよくは分らぬが、年は廿七、八まだ三十には成るまい、不絶しじゆう点頭勝うつむきがちに、こちらにけて腰かけて居る
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
尚、当時奈落には、二人の道具方がいたのだったけれども、合憎あいにく二人とも、開閉スイッチ室に入っていたので、その隙に何者が入り来ったものか、知る由もなかった。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
一度は僕も自分の癖見ひがみだろうかと思いましたが、合憎あいにく想起おもいおこすは十二の時、庭で父から問いつめられた事で、あれおもい、これを思えば、最早もはや自分の身の秘密を疑がうことは出来ないのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)