可畏こわ)” の例文
「あの可畏こわい阿爺が生きていて、私達のてることを見ようものなら、それこそ大変です。弓の折かなんかでたれるような目に逢います」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
するとお勢はきっと振向いて、可畏こわらしい眼付をして文三をめ出した。その容子ようすが常で無いから、お鍋はふと笑いんでもッけな顔をする。文三は色を失ッた……
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
先方さきの人も変に思ったでしょうねえ」と豊世は妹の顔を眺めて、「お仙ちゃんは、自分じゃそれほど可畏こわいとも思っていなかったようですね」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
可畏こわい事をお云いなさるねえ」とお政はおそろしい顔になッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
親しい先生のようでもあれば可畏こわいお父さんのようでもある肉体をそなえた神であった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)