可憐いじらし)” の例文
どうしたけな?』と囁いてみたが返事がなくて一層歔欷すゝりなく。と、平常ふだんから此女のおとなしく優しかつたのが、俄かに可憐いじらしくなつて來て、丑之助は又
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
残酷というのはね、仮にもしろ、そんな、優しい、可憐いじらしい、——弟のために身代りになるというような、若い人の生命いのち
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女性には柔軟な優しみ、惻々たる慈悲心、風雅な淑かさ、繊細な可憐いじらしさなどの情緒が蓄積されて来ます。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それからの彼は、たとえば、巣に病む親鳥へ子鳥がえさを運ぶような可憐いじらしさだった。朝夕、心から主人の盧俊儀ろしゅんぎをいたわった。仕えること以前むかしとすこしもかわらない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男の子の可憐いじらしさというものは! 栄養が不足しているからでもあろう、首は抜けそうに痩せているし母親の肩でおさえつけられている、頬などにも肉はついていなかった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どこへ廻っても、誤りしいたげられて来たような自分が、可憐いじらしくてなさけなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)