古樸こぼく)” の例文
形の上で意識的に調和を求めたような痕跡こんせきはみられない。胴体のくねりも遊び足もない。それぞれが古樸こぼくに佇立しているだけである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そして二郎とは無くて小太郎とあるが、まことに古樸こぼくの味のあるもので、想ふに足利末期から徳川初期までの多くの人〻の涙をしぼつたものであらう。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「相見ては千歳やぬるいなをかも我やしか念ふ君待ちがてに」(巻十一・二五三九)の「否をかも」と同じである。古樸こぼくな民謡風のもので、二つの聯想れんそうむしろ原始的である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
他の推古仏と同じように、その顔も稍々やや下ぶくれで、古樸こぼく端麗、少しばかり陽気で、天蓋の天人にもみらるる一種の童話的面影おもかげを宿している。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
調子も古く感じ方材料も古樸こぼくでおもしろいものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
太子の慈心を物語る美しい状景であり、またこの御歌も、古事記の諸歌と同じように古樸こぼく典雅にして、しかもあふるるがごとき慈心が憂いの調べとともに流れ出て美しい。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)