古文書こもんじょ)” の例文
勝国手は古文書こもんじょを写しなどした為に、早夕方になったのに驚き、今晩は大炊之助の家に厄介になるより他なくなった。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「さまよえる猶太人」に関して、自分の疑問に対する答を、東西の古文書こもんじょの中に発見した人があれば、自分はせつに、その人が自分のために高教をおしまない事を希望する。
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「それで勇君が、ポントスの部屋のかく戸棚とだなから発見した古文書こもんじょというのはどんなものだネ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
登子の分骨がここへ納められたときの足利義詮よしあきらの下知状もさきに見た古文書こもんじょ中にあって
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謙一がこの古文書こもんじょを見つけだしたのは、祥子の家が、田舎へ引きあげる時だった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
その証拠には、ローマに残っている古文書こもんじょにはすべてイダテマサムネと書いてあると云う。ローマ人には日本字が読めそうもないから、こっちで云う通りをそのまま筆記したのであろう。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山寺の古文書こもんじょも無く長閑のどかなり
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
自分は、数年来この二つの疑問に対して、何等の手がかりをも得ずに、空しく東西の古文書こもんじょ渉猟しょうりょうしていた。が、「さまよえる猶太人」を取扱った文献の数は、非常に多い。
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
というようなわけで、ここでもまた、阿蘇あそ家、相馬家の軍忠状とか、古文書こもんじょの断片とか、古典太平記よりはややましな梅松論などの傍証を綜合して書いてゆくしかないことになる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は、この伝説的な人物に関して、かつて自分がいだいていた二つの疑問を挙げ、その疑問が先頃偶然自分の手で発見された古文書こもんじょによって、二つながら解決された事を公表したいのである。
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自分はとうにただの古文書こもんじょとしていたものを、弟は純な初志と信条を離そうともしなかった。兄弟ふたり葛藤かっとうの根はそこから来ている。そこで毒を呑ませて根の一方を兄たる自分が殺したのだ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)