口授くじゅ)” の例文
そのことはさすがに、信盛に一任したが、信長はべつにまた在中国の秀吉にたいして、一通の軍令を口授くじゅして、祐筆ゆうひつに書かせていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駒井氏は、あれを翻訳し、自ら草稿を作ったり、或いはお松にのあたり口授くじゅしたりして、著作を試みているに相違ない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
終に全く失明して口授くじゅ代筆せしめて完了した苦辛惨憺を思えば構想文字に多少の倦怠のあるは止むを得なかろう。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
と先生は口授くじゅを始めたが、照常様は用意がなかったからさんざんの不成績だった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
◦西洋料理くりやの友 精養軒主人口授くじゅ、大倉書店、三十五銭
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それでも院は言葉などを口授くじゅしてお書かせになった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
寒燈の下に文章口授くじゅ筆記
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
手近の机で事務員に何か口授くじゅしているのが幹事の猪股先生だった。私は先生の眼鏡に注意を取られた。幾度見てもつるがない。鼻眼鏡だ。箱馬車と共に初対面だったから、好奇心が動いた。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
というのは、当道とうどうの一門人がそれを口授くじゅして記録しておいたものがのちに
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猪股先生は事務員を呼んで又先刻さっきの続きを口授くじゅした後、帽子を手にして
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と辞令の下書したがき口授くじゅしてくれた。僕がその通りを書いたら
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)