取退とりの)” の例文
やがて壇に登るべき立女形たておやまに対して目触めざわりだ、と逸早く取退とりのけさせ、樹立こだちさしいでて蔭ある水に、例の鷁首げきしゅの船をうかべて、半ば紫の幕を絞ったうちには、鎌倉殿をはじめ、客分として、県の顕官
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
松飾などはとう取退とりのけられて、人々は沈滞した二月を遊び疲れた後の重い心でものうげに迎えようとしていたが、それでも未だ都大路には正月気分の抜け切らない人達が、折柄の小春日和びよりに誘われて
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
底知れずの水に浮いた御幣ごへいは、やがて壇に登るべき立女形たておやまに対して目触めざわりだ、と逸早いちはや取退とりのけさせ、樹立こだちさしいでてかげある水に、例の鷁首げきしゅの船をうかべて、なかむらさきの幕を絞つたうちには、鎌倉殿をはじめ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)