取壊とりくず)” の例文
取壊とりくずさずにある御仮屋おかりやも潜み、うまやも隠れ、鼻の先の松は遠い影のように沈みました。昨日の今日でしょう、原の上の有様は、よくも目に見えないで、見えるよりかも反って思出の種です。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
で、主人あるじ驚愕おどろきは私よりも又一倍で、そう聞く上は最早一刻も猶予は出来ぬ、早速その窓を取毀とりこわし、時宜じきればの室全体を取壊とりくずしてしまわねばならぬと、すぐに家令を呼んでおもむきを命令した。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)