半暗はんあん)” の例文
行燈あんどんが一つ、あがばたに置いてあるだけで、そこらはうす暗い。その半暗はんあんを乱して、パッ、奥の廊下を渡って来た風のような人影がある。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
部屋の中から射すあかりで、そこらはぼうッと明るく、廊下の先は、夏の夜ながらうそ寒い半暗はんあんに沈んでいるのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのかげに身をひそめた左膳が、近づく駕籠を半暗はんあんにすかして見ると——蝋色ろういろ鋲打びょううちの身分ある女乗物。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
多勢が四方から、き入る先生をなでるやら、さするやら、半暗はんあんのひとのうちが、ざわざわ騒ぎたったすきにじょうじて、お蓮さまはするりと脱け出て、廊下に立ちいでた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
庭前の山茶花さざんか紅貝べにかいがらのような花びらを半暗はんあんに散らしている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)