北越雪譜ほくえつせっぷ)” の例文
わがくににも諸職各々忌詞いみことばあって、『北越雪譜ほくえつせっぷ』に杣人そまびとや猟師が熊狼から女根まで決して本名をとなえぬ例を挙げ
私は北越雪譜ほくえつせっぷ挿画さしえの中にある盲人が窓から落て来ていた絵のことを話そうと思っていたが、その盲人のことを思いだしたので、気もちが重くるしくなってもうそれを話す気はなかった。
雪の夜の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
土井利位どいとしつらの『雪華図説せっかずせつ』と鈴木牧之すずきぼくしの『北越雪譜ほくえつせっぷ』とを何とかして手に入れたいものと思って、古書の専門店の方へも聞き合せたことがあったが、折しくどうも手に入らないので困っていた。
語呂の論理 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
次に鈴木牧之ぼくしの『北越雪譜ほくえつせっぷ』にある話は、南魚沼うおぬま郡の池谷村の娘ただ一人で家にはたを織っていると、猿のごとくにして顔赤からず頭の毛の長く垂れた大男が、のそりと遣って来て家の内を覗いた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このフリーネは前に往者おうしゃなく後に来者らいしゃなしといわれた美妓で素性は極めて卑しくあたかも三浦屋の高尾が越後の山中、狼と侶をさんばかりの小舎こやに生まれたごとく(『北越雪譜ほくえつせっぷ』)
北越雪譜ほくえつせっぷ』の秋山の条を見ると、この山村には夜具を持っている家はただの二軒であった。その夜具というのもオロをもって織った布で、綿にもオロのくずを入れ、しかも客人にばかり出して着せる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)