前面むかひ)” の例文
みちすがら前面むかひがけ処々ところどころ躑躅つつじの残り、山藤の懸れるが、はなはだ興有りと目留まれば、又このあたりこと谿浅たにあさく、水澄みて、大いなる古鏡こきようの沈める如く、深くおほへる岸樹がんじゆは陰々として眠るに似たり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
又その前面むかひには一人の女に内を守らしめて、屈強の男四人左右に遠征軍を組織し、左翼を狼藉組ろうぜきぐみと称し、右翼を蹂躙隊じゆうりんたいと称するも、実は金剛石の鼻柱をくじかんと大童おほわらはになれるにほかならざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)