前杖まへづゑ)” の例文
黒焦に削れたるみきのみ短く残れる一列ひとつらの立木のかたはらに、つちくれうづたかく盛りたるは土蔵の名残なごりと踏み行けば、灰燼の熱気はいまだ冷めずして、ほのかおもてつ。貫一は前杖まへづゑいて悵然ちようぜんとしてたたずめり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)