初見しょけん)” の例文
金蓮はそのしなやかな両の腕を柳の枝のように交叉こうさして、初見しょけんはいをしながら、濃い睫毛まつげかげでチラと武松の全姿を見るふうだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦は其の初見しょけんに在りと、初見参しょけんざんおりしかと申し聞ける事は、わしより母の機嫌を取り能く勤めてくれんではならぬ、又人間は老少不定ろうしょうふじょうということがある
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし島田は思ったよりも鄭寧ていねいであった。普通初見しょけんの人が挨拶あいさつに用いる「ですか」とか、「ません」とかいうてにはで、言葉の語尾を切る注意をわざと怠らないように見えた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おらうちへ嫁に来ておら醜男ぶおとこで誠に何処と云って取り所も何もねえが、おらア精神を見抜いておめえの親父様もくれたゞから、末長く成るべいが、夫婦は初見しょけんにあると云うから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それで話は多くそちらの方面へばかり延びて行った。しかし自分の著作について初見しょけんの人から賛辞さんじばかり受けているのは、ありがたいようではなはだこそばゆいものである。実をいうと私は辟易へきえきした。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)