凝固こりかたま)” の例文
自由の利く者は誰しも享楽主義になりたがるこの不穏な世に大自由の出来る身を以て、淫欲までを禁遏きんあつしたのは恐ろしい信仰心の凝固こりかたまりであった。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その苦しい生活の中にも理想をもって人間らしく生きようとした思いの凝固こりかたまったものとして作品の中に溢れている。
なすに千太郎も我が身ながらあまりとや思ひけん一言も言ず只々たゞ/\ゆるしたまへとばかりにて兎角とかくするうち久八が忠義一※に手先迄凝固こりかたまりて千太郎が咽喉のど呼吸こきふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それとも時が經つて血が凝固こりかたまつたためか、さんの下は大して汚れては居らず、少しばかり血が附いて居るにしても、敷居の穴に棧を密着させる程ではありません。
いかに野育のそだちの彼でも多少の理屈は呑込のみこめるのである。加之しかこれはお葉の説教である。復讐に凝固こりかたまった彼の頭脳あたまの氷も、愛の温味あたたかみで少しくめて来たらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)