冬陽ふゆび)” の例文
降るか降らないかのような時雨しぐれが道を濡らしていたが、鳳輦みくるまが御所を出るころには、冬陽ふゆびし、虹の立ちそうな美しい鹿島立ちになった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠々とほどほに消えてゆくものは雀のかげ、冬陽ふゆびの名残、時雨も幽かにわたつてゆくが、ともすると、いつのまにやら雪になつてる。函根あたりは猶さらだ、白い白い雪の野山だ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
外の大気は明るく、武者陣の甲冑には、冬陽ふゆび虹色にじいろ陽炎かげろうしていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水上みなかみ屋群やむら片寄る高岸に瀬のぞひびく冬陽ふゆびさしつつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)