典医てんい)” の例文
典医てんいだけは奥へ出入りしていたし、城後の梅花は、日々ほころびそめて来るのに、その後、管楽かんがくの音は絶えて、春園もげきたり——であった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十年の長い間、病床にこもってはいるものの、以前は松平伊予守の典医てんいを勤めていた真斎しんさいとて、その言うところは、人柄をしのばせるものがあった。
以前、杉山がわしの旧領から連れて来た、たしか、伊東某とかいった典医てんいの孫で、胸が悪く、邸の別棟になって居る園丁えんてい小屋に住わせてくれといった若者だと気がついた。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
彼が、右すれば右、左すれば左へと、近習、侍大将、参謀、旗本、典医てんい同朋どうぼうの者などが、ぞろぞろと護って歩いていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いうのが寝つくよりも先で、常に左右にいる典医てんいよりも、彼への信頼のほうがはるかにあついようであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
典医てんいから薬を上げたということを聞いていた側臣たちが、もし夜半の雨にでもわれては、と案じて云ったことばに対して、光秀があたりの者へ答えながら、また
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
典医てんいを呼べの。高価な薬を取り寄せろの。やれ、夜具が重いの。こんな食物は病人にたべられぬのと。——例によって、かの女のわがままは、家じゅうを、手こずらせた。
その間に、羽柴家の典医てんいが見え、ってと願って勝豊の脈をた。そして薬湯をすすめた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、典医てんいや茶坊主どもは、あわてぬいている。侍たちも、こもごも見舞に来て
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『また、胸がお痛みでございまするか、典医てんいを召しましょうか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)