其詞そのことば)” の例文
お政は冗談のように笑って云ったが、其詞そのことばの底には何かの意味があるらしくも聞えた。冬子も恨めしそうな眼をして、市郎の顔をていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鹿太は物騒がしい世の中で、「黒船」のうはさの間に成長した。市郎左衛門の所へ来る客の会話を聞けば、其詞そのことばの中に何某なにがしは「正義」の人、何某は「因循いんじゆん」の人と云ふことが必ず出る。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
市郎は彼が家出ののちに生れたであるから、相互たがいに顔を見識みしろう筈はなかったが、其詞そのことばはしよって、重蔵は早くも彼が角川家のせがれであることを悟った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)